キャリアの棚卸しと次の一手 – Will/Can/Mustで読み解く自分と転職のタイミング

📚 このコンテンツで学べること
1. 自分の経験を体系的に整理できる
2. なぜ次のキャリアを考えるのかが明確になる
3. キャリアの選択軸が分かる

所要時間: 25分 難易度: 初級 種別: テキスト


目次

はじめに

「次のキャリアを考えたい」と思ったとき、多くの人はいきなり「どんな職種がいいか」「どの企業に行けるか」を調べ始めます。しかしそれは順序が逆です。

まずやるべきは、自分の経験・能力・価値観の棚卸し。これがないまま職種を探すのは、表面だけを見て職種名に飛びついているだけで、自分に合う選択肢は見えてきません。

このコンテンツでは、Will/Can/Mustという古典的で強力なフレームワークを用いて、キャリアの棚卸しを行い、次の一手を考える流れを紹介します。PASETの転職面談でそのまま役立つ内容となります。


1️⃣ Will/Can/Must とは

キャリアを考えるときの3つの軸です。

Will  = やりたいこと(情熱・興味)
Can   = できること(スキル・経験)
Must  = やるべきこと(期待・使命)

この3つが重なる部分が、あなたの基盤になるべき仕事の領域です。

重ならない場合

  • Will のみ: 想いはあるが実力が追いつかない。要努力。
  • Can のみ: できるがやりたくない。燃え尽き注意。
  • Must のみ: 誰かが望むが、自分の人生にならない。

さらに大切なこと

3つは固定ではありません。やっているうちにWillが変わり、経験がCanを拡げ、環境がMustを変える。そのたびに再棚卸しするのが健全なキャリア設計です。


2️⃣ Step 1: 過去の棚卸しをする

まず、これまでの仕事を読み解きます。場合によっては学生時代にまで遡ることもあります。

書き出す項目

過去にやってきた仕事・プロジェクトごとに、以下を1枚にまとめます。

【期間】
【役割・役職】
【達成したこと】
  ・数値で語れるもの
  ・障害を越えたこと
  ・他の人に影響を与えたこと
【学んだこと・身についたこと】
【苦労したこと・失敗したこと】
【面白いと感じた瞬間】
【つらいと感じた瞬間】

コツ

  • 小さな件も書く: 「役に立ったか」は後で判断する。まずは羅列
  • 「数字で語れる成果」を意識する: 「目標達成」だけでは弱い。「○○%削減」「△△万円創出」など
  • 仮に数値がなくても: 「規模」「期間」「依頼元」で背景を語る
  • つらさ、失敗も書く: これが学びの原泉であり、面接でよく聞かれる

棚卸しの成果物

この作業が終わると、「過去の自分の着地」がA4数枚分にまとまります。これがないままに職務経歴書を書くと、よくある文面になりがちです。棚卸しを経由すると、自分だけの角度が見えてきます。


3️⃣ Step 2: Can を抽出する

棚卸しから、人に説明できるレベルの経験とスキルをリスト化します。

3層に分ける

レベル1: 業務知識・特定技能
「Salesforceのカスタマイズができる」「SQLで分析ができる」など、具体的で検証可能なもの。

レベル2: 業種・職種の経験
「SaaS企業でのB2B営業3年」「製造業の人事管理部署」など、業界と職種の掛け合わせ。

レベル3: ソフトスキル・思考型・振る舞い
「立ち上げ期のカオスをいとわない」「クレーム対応での落ち着き」「異部門間の調整」など。これが他の人との差別化になりやすい

Canをうまく伸ばす方法

同僚・上司に聞く: 「自分じゃ気づかない自分の強み」を教えてもらう。「自分に任せると安心」と思われている理由に、言語化されていないCanがほぼ確実にあります。

逆の角度で見る: 「みんなは悪く言うが、自分は苦にしないこと」を考える。「他のみんなが嫌がっている仕事」は、それがあなたのCan。


4️⃣ Step 3: Will を明確にする

Willは「夢は?」と聞かれると答えにくい質問です。もっと小さく、具体的に掘ります。

答えやすい問い

  • 最近、時間を忘れて打ち込んだことは?
  • SNSでよく見る人はどんな人?
  • 1週間休みがあったら何をしたい?
  • 自分の葬式で『どんな人だった』と言われたい?
  • 年収が同じなら、どんな仕事をしたい?

Will の2種類

手段的Will: 「業種」「職種」「企業規模」など。これは変わりやすい。

目的的Will: 「デザインが美しいものに関わりたい」「弱い人の助けになりたい」「新しいものを作るチームにいたい」など。こちらは変わりにくい。

転職で照らし合わせすべきは主に目的的Willです。手段を変えても、こちらを裏切らない職種なら、満足度が保たれます。


5️⃣ Step 4: Must を言語化する

Must は「人に期待されていること」だけではなく、「自分が自分に課していること」も含みます。

質問例

  • 今の職場で、自分が済ませておきたいことは?
  • 家族・パートナーとの約束は?
  • 経済面で守るべき条件は?
  • 健康やライフスタイルで譲れないものは?
  • 自分自身との約束で、今期中に済ませたいことは?

Must を見える化しておくと、「転職先で何を譲らないか」が明確になり、選択の迷いが減ります。


6️⃣ Step 5: 3つの重なりを見る

Will/Can/Must をベン図で描いてみます。

理想の状態: 3つが重なる部分

やりたくて、できて、期待されている。この領域が大きいと職業人生は充実します。

実際によくあるパターン

Can と Must だけが重なってWill がない: やれているけど充実感がない状態。多くの中堅パーソンがここにいます。
→ Willを強めるか、またはMustを変える(転職して期待されることを変える)が必要。

Will と Must だけで Can が追いついていない: やる気はあるし期待もされているが、今の自分にはできない。つらいけど、成長のチャンス。
→ Canを高める投資をする。学び、小さい成功体験、メンター探し。

Will と Can が重なるが Must が違う: やりたいこともできることもあるが、今の職場で求められていない。
転職のサイン。WillとCanが追いつかないよりも、Mustがズレている場合のほうがミスマッチは解消しやすい。


7️⃣ キャリアの選択軸

「職種を変える」「企業を変える」「業界を変える」——この3つの軸があります。

                ↑ 業界変更
                |
職種変更 ←−−−−+−−−−→ 企業変更
                |
                ↓

選択肢のリスクレベル

パターン リスク リターン
企業のみ変える 低(同じ土俵でのレベルアップが中心)
職種のみ変える
業界のみ変える
職種と企業を変える
三つとも変える 極高 極高(既存経験が活かされにくい)

領域を越える転職のコツ

共通要素を見つける: 全く違う領域に跳ぶと言っても、実は何かを引っ張っていける。「IT業界のB2B営業」→「医療業界のB2B営業」なら、顧客は変わるが「B2Bのコミュニケーション技術」が共通。

二段階で進む: 「領域変更 + 職種維持」で一度止め、その後「職種変更」を考える。一気に跳ぶよりコストが低い。

💡 ポイント: 「期待給与」と「長期的な市場価値の伸び」のどちらを優先するかの判断が転職では大事。給与優先は短期で見ると正しいが、長期ではCanが伸びない場所にロックインするリスクもある。


✅ まとめ

  • キャリアを考える順番: 自分の棚卸し→選択肢を探す。逆はダメ
  • Will/Can/Must の3つの軸で自分を読み解く
  • Can は3層(技能/経験/振る舞い)で抽出すると見落としが減る
  • Will は「手段的」と「目的的」に分ける。転職で重視するのは後者
  • 3つの重なりが小さい状態が転職のサイン
  • 職種・企業・業界の3軸で変えるのは1つまでが安全

📌 実務ポイント: 転職活動・面接でどう活きるか

職務経歴書で: 棚卸ししたCanをすべて書くのではなく、応募先にMustで求められているものとの接続が見えるCanに絞る。何でも書く人は「強みがぼやけている」と判断されます。

面接で: 「自己PRをお願いします」に対して、Will/Can/Mustのセットで語ると伝わりが格段に良くなります。「こういう件を大事にしたいという想い(Will)があり、この経験とスキル(Can)で、貢献したい(Mustになれる領域)は○○です」の構文。

入社後の再棚卸し: 転職がゴールではありません。新しい環境で半年ごとに再棚卸しする習慣を作ると、その次の転職やキャリアの変化が新たに豊かになります。


さらに学ぶには

  • 同カテゴリの今後公開予定の「はじめての1on1」「自己成長のためのフィードバック活用術」では、Canを伸ばす具体的な方法を扱います
  • 「生成AI時代に求められるビジネススキル」と合わせて読むと、これからのキャリア設計の重要視点が整います
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